名前:レスタウミン・アント
年齢:19
職業:会社員(株式会社We Genesis 倫理部 部長)
趣味・特技:ふやすこと、従うこと
新しい役職に就任した2年目社員。
コンテンツの警告:食人、単為生殖その他生命倫理に関する冒涜的な表現←先に確認したい方はドラッグして下さい(ネタバレ有)
※このSTORYは全てフィクションです。実際の人物、団体、事件などには一切関係ありません。
おことわり:EPISODE6にて
「(中略)Slaymess-Jobieはヒトを食べてない」
という台詞がありますが、
これは我々が享受している時空において「明らかに間違った言説」です。
また、この台詞は
【特定のウイルスがヒトに危害を加えているのではなく、あくまでヒトの政治がヒトに危害を加えている】【特定のウイルスはヒトの進化・淘汰を促すもので、これを阻害すべきでない】といった思想を肯定するものではありません。
EPISODE1
「はい」と「やります」だけ言ってたら部長になってた。
正直「部長」がどういう役職なのか全く分かってない(次長よりは上?)。
それ以前に「倫理部」とかいう部門が何をする所なのか、私はおろか殆どの社員が分かってないっぽい。
人事の偉いさんは
「政府が【300人規模の企業に対して5人以上で組織された倫理部を置くこと】って言ってきたから。税金逃れだと思ってやってくれない?」
とか言ってた気もするけど、「やります」と言ったからには精一杯己の役割を全うしようと思う。
EPISODE2
まず部下4人が全員身内の平社員なので、「倫理部」が外部の監査組織でないこと(まず私が部長になってる時点でそれはない)、【部長】という役職が他の部門の部長と同格であること以外意味を成さないことは理解できた。
とりあえず誰も何も説明してくれない(そもそも説明できる人がいない)ので、可決した法案を自力でスタディしてく訳だが、結局何が倫理違反で何がセーフなのか基準がさっぱり分からなかった。
仕方ないので部下4人には
「お前ら全員スパイ。他の部署でヤバそうなのあったら私にチクれ。」
と言って退勤時刻を迎えた。
EPISODE3
毎回同じような報告を聞かされる。流石に飽きてきた。
イムとイズは「Geneme11の開発に参加したい」と言うし、ウィンクとウィートは
「もⅦ国との関税撤廃によりGeneme11は10と比べてコストが抑えられ、なおかつ今までは不可能だとされていた練医ノーオペでの3ヶ月コンテも可能になる云々……」
と、よく分からない外交関係の話しかしてこないし、勘弁してくれよと思う。
一応倫理部長は相応の人事権を持っている(厳密には人事の偉いさんを【使う】ことができる)ようで、強権を発動し前2人には開発の参加、後2人にはもⅦ国営企業との商談に関わる方向に無理矢理持って行った。
EPISODE4
イムもイズも3ヶ月コンテが上手くいったようで、あと1ヶ月もすれば外して育てられるそうだ。ウィンクとウィートは煬の採掘現場にも行ってきたそうで「ありゃ陽と同じで枯渇するのも時間の問題ですよ」「価格帯維持できるのは6~7年までっすね~その頃にはGeneme12か13が出てますけど」と口々に言っていた。皆学校行事のノリで仕事をこなしており、それでいて会社の役には立ってるらしいので、特に私から何か指摘するようなことは無かった。
EPISODE5
腹を空かせて家に帰ると、ラボから直送されたコンテ双生児の煮込みがあった。
イズ曰く
「検査でW1(基礎言語力)が下振れ起こしてたからやり直し」
だそうで。
1個だけ育てているイムはあと3日だけコンテに詰めて経過を観察するみたい。
ウィンクとウィートは「尻肉がホロホロになってて良い」と口を揃えてたけど、私は未発達のアキレス腱が未知の食感だったのでフルコースの肉料理に加え入れた。
EPISODE6
もⅦ政府から煬密輸の嫌疑をかけられたようで、何故かウィンクとウィートだけでなく私も吊られることになった(後から分かったことだが、嫌疑をかけられたのはウィートのみで、煬を不法に持ち帰る罪は【当人のみならず長女を含む兄弟姉妹半数以上の処分】に相当するようだ)。丁度私は4歳と5歳を2個ずつ所有してたので、それらを手放すことで事なきを得たが、ウィートは
「瓜田に履納れた覚えないっすよぉ~?」
とズレた物言いをしている。流石に頭にきた私は
「【狼にされた少年】を学校で習わなかったのか?」
「生まれながらの正直者でも村人が信用しなければ結果は同じだろうが」
「禰逗子とSlaymess-Jobieはヒトを食べてない」
とまくし立ててしまった。
EPISODE7
結局、 煬密輸の嫌疑でラボに第一子を残してるイム以外解雇された訳だが(イムは実質軟禁状態)、それから2年で私たちが干からびるようなことは無かったし、むしろ新しい稼業で順風満帆の生活を送っていた。
私は部長権限で手に入れた社の情報をch隋国に流して、引っ越し先のローンを完済したし、ウィンクとウィートは精子の先物取引で一儲けしてるらしい。いや、流石に宅配で1枚(2500アンプル)届いた時は「ペーパー取引じゃないの!?」って驚いたけど(ウィートは「リスク回避~」とか言ってたが、宅ラボの維持費が嵩むようなことはやめてほしい)。
イズは私がch隋から返礼品として頂いたPoduc-Xで順調に殖やしてるし、まあ全体的には問題ないだろう。
あの予言を除いては。
EPISODE8
解雇されて3年、やっとイムが戻ってきた。
結論から言うと、ch隋国高官を名乗る者の予言は当たっていた。
ch隋の軍事政策でF系(第六感)を定向進化させてる話は本当らしい。
イムは第一子に溺愛してて、ウィンクとウィートが困惑するほどだった。
私の子やイズの子達と関わりを持たせたくないようで、個室を整備するや否や再び自己軟禁生活を始めている。
イズはイムの第一子に飲ませてる粉薬を特定したようで、
「あれやばい。ステ振ってない。完全にクローン育ててる。」
「あんな薬漬けのクローン年取らせて何になるんだよ。」
「戸籍事後登録する前に落としたいんだけどどうする?」
と意見を求めてくる。
私はch隋の予言について話すことも可能だったが、バタフライエフェクトによるリスクもあったので、
「このまま行けば自動的に両方落ちるルートだから安心して?」
と言っておいた。
EPISODE9
それから半年後、イムの第一子はSlaymess-Frqpに罹患、イムも後を追った。
万事上手くは行ってるが、あれが「予言」ではなく「犯行予告」と取れなかったのは後訓とすべきだろう。
後はどうでも良かったのでウィンクに後処理を任せたら
「10年周期で人口調整施策は来るから対処しようって言った気がするけど云々」
と愚痴ってくる。
いやワンダ(5歳になる私の子)は熱出してるだけで済んでるから、と言おうとしたけど、多分あいつはデスゲーム産業の株を損切りしないといけなくなってスネてるだろうから、
「養蝉場でも買っとけば良かったんじゃない?」
と言っておいた。
EPISODE10
更に8年が経った。
Geneme13が発売休止になったり(12を今でも売り続けてるのヤバ過ぎだろ)、
人口が300億を突破したり、煬の争奪から始まったch隋ともⅦの大戦が終結したりと、色んなことがあった。
レスタウミン一族のリザルトに関しては散々で、ウィートが取引で自分の精子混ぜてるのがバレて帰らぬ人となった。
とは言うもののイズと私で10人揃えて、ワンダは13歳でもう私より賢い。
ウィンクはまだまだ動けるし、もⅦ内戦需要でIJFH(Infant Jet Fighter Headgear)の転売が好調だから大丈夫。
私もそろそろ30だし、薬を飲む量も増えてきた。もう辛い。
見かねたイズは
「皆大丈夫だから、いつでもいいよ」
と言ってくれた。
私は
「はい」
とだけ言って家を出た。
EPISODE11
特に思い返すこともないくらい、満足できる結果だったと思う。
母のコピーとしての務めも、十分に果たせたと思う。
後は私のコピー達が何とかしてくれるでしょう。
【「永遠が手軽に得られる」と感じられて良かった。】
そう言い聞かせて、私は左腕の静脈から入ってくる冷たい世界を受け入れた。
References:
無い学問
https://twitter.com/music_shio/status/1313049029425557504
https://note.com/music_shio/n/na13ea50fbb73
IMAWANOKIWA(純セメス解釈)