【STORY】闇薬稼業、篳篥beat【寓話】

名前:篳篥beat

年齢:40代

職業:ミュージシャン

興味関心:この世界の行く末について、俺は何を成し遂げられるのか

 

かつて偽りの16才高校生天才ボカロP"Mary3to"の立ち上げに関わった男が己の音楽人生を回顧する。

 

"Mary3to"メンバー

稀碁/(朝遺乱徒)/篳篥beat/桜終期

※このSTORYは全てフィクションです。実際の人物、団体、事件などには一切関係ありません。 

 

 

EPISODE1


 とりあえず俺がやった仕事の話でもさせてくれ。

時系列はバラバラだ。すまんな。覚えてないんだ。いちいち。

だから俺がいつ"闇薬(おんがく)"と呼ばれて、

それを名乗るようになったかも覚えてない。

各々の出来事自体は結構鮮明に覚えてるからそれで我慢してくれ。

えーっと、どうしようかな。

まず、アレだ。"Mary3to"無理矢理解散させたのは俺だわ。

 

 

EPISODE2


 正直、稀碁以外なら誰でもそうする。

確かに「16才高校生天才ボカロP」という「偽りの偶像」を「俺達で創り上げる」という「邪悪さ」に惹かれて計画に参加したのは違いない。

ただあんな曲出されたらもう終わりだろうが。

アレだよ。アレ。

……曲名忘れちった。

聴いたら思い出すわ。

とにかく宿敵"揺らりん"が"GrandAir"と組んだら終わりだろうが。

あんなもん出されたら俺らの曲に価値なんかねえよ。

稀碁だけは最後まで食い下がったんだが

 

「曲伸びてるの俺が関わってる時だけだろうが」

「桜とお前で作った奴だけ何で再生数半分なんだよ言ってみろよ」

「何が【夜凪】【百城】【麻薬】だボケ」

「電波曲で一発当てんのが一番コスパ良いに決まってんだろうがバカ」

 

とか何とか言って潰したのだけは覚えてる。

とにかく揺らりんとGrandAirが動画上げたその日に解散した。

 

とまあ……こんな感じで、「音楽」そのものよりかは、その周辺を取り巻く「人事」や「政治」の仕事について話したいと思う。

これが色々あるんだよ。

 

 

EPISODE3


 これは完全にいつの話か覚えてねえ。

俺が産まれる前の話じゃねえの?

とにかく「極限(KYOKU-GEN)」っていう新しいネットのカードゲームが流行り始めて、そのテーマソングを書き下ろしてくれ、っていう仕事だったと思う。

とりあえず遊んでみねえと始まんねえなと思ってやってみたら、気が狂うかと思った。

いや、まあ、これも当然なんだよ。人間のために作られたゲームじゃねえんだから。

ゲームシステムからカードイラストまで全部AIが創ってるんだってなあ?

天文学的な回数のテストプレイをAIにやらせて、完全に(社の利益が最大化するように)調整された新規カードが毎月1000枚単位でやってくるわけだよ。

つまりAIにやらされてるんだよ。ゲームを。

怖いよ?気付いた時には200時間溶けてたんだから。

曲提出したら速攻でアプリアンスコしたんだけど、再提出要求されちゃってさ。

AIに。

いやもう音楽AIもってるんだったらもう全部そいつに作らせりゃいいじゃん、って思ったんだけどさ、コンサルタントAIが「篳篥beatに作らせろ」って言ったらしいんだよね。

もう人間じゃなくてAIがお客様になってくれてるって、何か嬉しいよね。

嬉しくねえよバカ。

 

報酬たくさん貰えた時は流石に嬉しかったか。

 

バカは俺だわ。

 

 

EPISODE4


 これは多分"Mary3to"解散よりかは後だわ

どうしても例の音楽祭で1位取りたいって奴がいてさ。

とにかく手段を問わない、信用を失っても構わない、

何なら運営に消されて「実質1位」でも構わないっていうメチャクチャな奴だった。

まあその……コンサルタント料に釣られて仕事を受けたんだが、

結論から言うとかなり痛い目に遭った。

 

俺が提案したのは大体尺が20~25分くらいの「野●先輩○○説シリーズ」の投稿。

ツレのツレ?が結構例の音楽祭のランキング内部ポイント制度に詳しくてね(モノポリタン君だったっけ?)、「視聴者が完走さえすれば長尺動画の方が圧倒的に有利」なのは判明してたんだよ。

要は「2分半の動画を1人が最後まで視聴した場合の再生数:1」よりも「25分の動画を1人が最後まで視聴した場合の再生数:1」の方が大体5~10倍くらい内部ポイントが高い。

逆に言えば再生数:10あっても全員が最初の10秒で視聴切ってたら内部ポイントはほとんど皆無に等しい。

「じゃあ100分くらいの動画上げりゃいいじゃん!」っていう話もあったんだけど、「もしかしたら完走ボーナスポイントがあるかもしれない」っていうのと、「内部ポイントがどのタイミングで加算されるのかが不明(つまり、例の音楽祭開始1時間のランキングに1位で乗せるためには、時間内に完走可能な60分以内の動画である必要がある)」っていうのと「そもそも25分を越えだすと画質が極端に落ちるから避けるべき」っていうのがあって、結局23分くらいの動画を上げることになった。

 

とにかく視聴者には23分完走してもらう必要があったから、もちろんサムネも野●先輩と卑猥なボカロキャラクターのイラストが両方映るようにしたし、内容も一部のボカロPが企業案件で契約違反の情報漏洩をしていただとか、違法薬物を使用してただとか、反社と関わってただとか、もう本当に俺の持ってる情報全部乗っけることにした。

それだけのコンサルタント料は貰ってたし、何より奴の

「この界隈を変えたい!」

っていう気持ちに押されてしまった、っていうのもある。

もちろん俺の関係者もほぼ全員動員した。1000人くらいだったっけ?

開始数十分で完走視聴(23分)の1000再生と、1000いいねと、1000マイリスが確定。

もちろん開始した瞬間にSNSで拡散することも確約してたから、まあ1位は確実だろうと。

 

今思い返してみるとあの時の俺はおかしかった。

金と情に釣られてどこの馬の骨かも分からない奴に情報を売るなんて以ての外だった。

 

投稿された動画の内容は"Mary3to"が偽りのボカロPである暴露と、揺らりんの秘密の暴露だった。

確認のため俺に見せた動画とは全く違う内容だった。

 

特に後者が最悪だった。

俺が揺らりんの秘密を言いふらしているような内容にされてしまった。

とにかく奴は最初から俺と揺らりんを告発する気で、俺のアイデアと人員リソースが欲しかっただけだった。

 

開始1時間のランキングでは2位と圧倒的な差をつけて1位を独占。

その30分後に運営権限で動画が削除。

またその10分後に何故か俺の関係者が動画を再投稿(後で知ったが俺に対する怨恨でほぼ全員寝返ってた)。

再び拡散。

1時間20分後にはランキング1位を再び獲得。

数十分後には削除。

数分後に関係者が再投稿。

拡散。

ランキング1位

削除。

今度は無関係のリスナーが再投稿。

拡散。

ランキング1位

削除。

その間にリスナー共が同じ動画をいくつも投稿

深夜帯なのもあって関係者の1000いいね1000マイリスでランキングの1位から5位を独占することもあった(なんでお前ら俺と揺らりんを潰すために徹夜してんだよ)。

 

結果、例の音楽祭の例の動画は伝説になり、俺は表で仕事ができなくなった。

そして揺らりんからは同情の世論が集まり、世界中を巻き込む揺らりんの伝説が始まったんだ。

 

それはまた別の話で。

 

 

EPISODE5


 えーっと?これは裏の仕事だから多分音楽祭騒動の後だなあ。

数年間くらいは特に目立った話はないはず。

ダイジェストでお送りする。

妻とは離婚したし、そこからは専らクローンゲームのBGMを作るようになってた。

どこで流通してるかも知ってた。小国のマフィア間での流通だ。

ゲーム自体は主に我が国hu薙の人気ゲームの内、オフラインでも遊べるものを真似て作ったものが殆どだった。

いかつい顔した営業担当に

「もⅦのゲームは真似ないのか?」

「hu薙に比べてもⅦの方が見習うべき科学技術・娯楽・人事掌握の手法が沢山あるはずだ」

と訊いたことはあったが、

「あんなヤクザ国家から見習うものはない」

の一点張りだった。

 

俺がBGMを付けたゲームは主に地下ギャンブルやマフィア間での紛争解決手段に用いられた。

地下ギャンブルで面白かったのが「AIテトリスバカラ」だ。

無料配布されているテトリスAI同士を戦わせて、どちらが勝つかを予想するギャンブル。

あくまで戦いの舞台はクローンゲームのテトリスの中で、どちらが勝つか分からないように毎回落下スピードの条件等を変えて戦わせてたのが商売上手だと思った。

マフィア間でのシマの奪い合いは主に格闘ゲームやオフラインでも遊べるFPSのクローンゲームで決着していた。

マフィアグループはそれぞれゲームに特化した「代打ち」を抱えていて、中には表の世界で失言をして引退に追い込まれたプレイヤーもいた。

代打ち達は「裏eプロ」と呼ばれて闇の世界で鎬を削っていた。

 

いかつい顔した営業担当も裏eプロ界隈のファンで

「今日は○○が負けて指を詰められてたよ」

とか

「昨日は××が負けて両腕を落とされてたよ」

とかを興奮して語ってた。

 

EPISODE6


 これはアレだな。hu薙がだいぶんもⅦの文化や思想に染まってきて、俺もだいぶん反社の文化や思想に染まってきた頃の話だ。

話していくうちにだいぶと時系列もわかるようになってきた。

 

娘と再会したんだ。

「なる」って言うんだ。俺の一人娘。

お前も知ってるだろ?

忘れた?ふざけんじゃねえ。

妻と別れてもう会えないと思ってたが娘の方から来た。一人で。

 

「苗と決闘(デュエル)することなった。親父、今までありがとな~」

 

初めて娘の「眼」を見た気がした。

今まで会ってきたどのマフィアよりも怖かった。

止める気は起きなかった。

あーこいつ死ぬわー、と思うだけしかできなかった。

 

翌日、といっても深夜1時過ぎだ。

俺は何かに突き動かされたように散歩に行った。

 

制服姿のきれいな女の子と、俺の娘だった気がする肉塊が転がっていた。

 

EPISODE7


 その女の子は死体の処理に困ってるようだったから、一緒に手伝ってあげた。

死体は結構重いから河に棄てるだけでも一苦労だ。

そっからは「とにかくデッキを見せてくれ」と詰めに詰めまくって見せてもらった。

 

《褥彁 アストライア》

特殊シンクロ・ペンデュラム・効果モンスター
星7/光属性/天使族/攻2500/守2000
【Pスケール:青7/赤7】
ルール上、このカードをPスケールに置いてP召喚を行う場合、もう片方のPスケールに記される夕字とをまとめて○で囲ってョ米とし、それが胡された結果と同じレベルのモンスターのみをP召喚する
【モンスター効果】

このカードは通常S召喚できず、Pゾーンに「褥彁」または「極”」カードが存在する場合のみP召喚できる。

自分フィールドの「遽s学」モンスターが攻撃・効果の対象となった際、それを無効にし、EXデッキに裏側表示で存在するこのカードと「褥彁 シルヴィアス」をPゾーンに置き、EXデッキに裏側表示で存在する「極”」モンスターをP召喚する。

自分フィールドの「極”」モンスターが攻撃・効果の対象となった際、それを無効にし、その無効にしたカードと対象のカードを全てS素材としてこのカードを特殊S召喚する。

自分は「褥彁 アストライア」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

①:空いているPゾーン1ヶ所と相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスター以外の相手フィールドのカードを全て除外する。その後、このカードを対象の空いているPゾーンに置く。

 

案の定、もⅦのカードだった。

 

「名前は?」

「? 美苗ですよ?」

「これで何人殺した?」

「数えるんですか?」

「俺と一緒に音楽やらないか?お前だったら最高の【夜凪】が創れると思う。毒を以て毒を制すんだ。揺らりんを倒すぞ」

「私……もう行かないと」

「どこに?」

「ポチのところに行きます!」

「お前も死ぬのか」

「? 死にませんよ?」

「昨日娘と会ったんだ。同じ眼をしてた。」

「……?」

 

美苗は首を傾げて全身を刺すような眼差しで俺を見つめる。

まだ俺に少しだけ興味があるみたいだ。

 

「まあいい。お前はもⅦに戻るんだろ。もう二度とhu薙には戻らない。」

「ちょっとだけ面貸せ。お前に今のhu薙を見せてやるよ」

 

EPISODE8


 「どこまで歩くんですか?」

「うるせえ。お前は24時間走っても疲れねえだろ」

深夜3時、女子高生とオッサンが住宅街で2人きり。

「驚きました!住宅街なのに同じようなビルが3つもあるんですね!」

「もう全国に100件以上ある。複合商業施設と銘打ってるが、揺らりんの音楽や思想の布教に使われてる。」

「100件くらいしかないのに、ここだけで3件もあるんですか?」

ドミナント出店、っていうのもあるが、この地域に聖地があるんだ」

 

歩く、歩く、歩く。

何かに突き動かされたように、歩く。

理由は分かってる。

「相応しい場所」を探しているんだ。

 

「美苗、着いたぞ」

深夜4時、公園で女子高生とオッサンが2人きり。

 

「ここが……聖地ですか?」

「違う。お前なら分かるはずだ」

「?」

「……出たところの交差点行ってこい」

「確かに……霊がたくさん居ますけど……」

「マジか。俺には1体しか見えねえ」

「いちばん強く見える男の子なら分かりますよ!」

「じゃあ、それだ」

「……」

 

美苗はその男の子が誰なのかを俺に訊かなかった。

もとより俺も答える気は無かったが。

 

「はぁ~疲れた」

「おい、美苗」

「俺を殺してくれ」

 

 

EPISODE9


 「いいんですか?」

「お前なら分かるだろ」

「動機が必要だと思います!」

「どっちの動機だ」

「?」

「俺の動機は分かってるのか」

「箱部おとうさんは、これ以上やっても、何も成し遂げられないですからね?」

「分かってんじゃねえか」

「ただ、決闘もせずに命を捨てようとするのは、ちょっともったいないかな?」

「お前以外なら絶対止めるんだよ、この場面」

「お前しか介錯できる奴がいない」

「1人で死ねばよくないですか?」

「お前がいい」

「お前はまだ可能性がある」

「糧になりたい」

「報酬が少ないと思います!」

「じゃああれだな……お前が俺を殺す動機か~うーん」

「どうせ俺の娘が持ち去ったんだろ」

「輸関?とやらに必要な燃料の素材を」

「今俺の体内にある」

 

 

EPISODE10


 っていう感じの流れで、無事ここに到着した訳だ。

あー決闘は結局やった。遊戯じゃなくて極限(KYOKU-GEN)の方で。

自信あったんだが普通にもⅦのカードでボコボコにされた。

もⅦ側の奴と決闘やっちゃ駄目だわ。めっちゃ痛かったもん。

 

話はもういいだろ。

閻魔様。

早く娘に会わせてくれ。

 

 

EPISODE11


 はい!どうも~

今回ね、DJを務めさせて頂きます、

"闇薬(おんがく)"こと、篳篥beat」と申します。

ここに来た皆はね。俺のやったこと色々知ってると思うんだけど、

勿論地獄行きでしたね!

 

(笑い声)

 

今日はもう一旦全部忘れましょう。

「遺した息子は今どうしてるか」

「おとうさん、おかあさんごめんなさい」

だとか、

「我が国の行く末はどうなるんだ」

とか、

「ここの刑罰、俺が働いてた時より楽じゃね?」

とか、

もうね、そんなこと一旦全部忘れて!

現世の人間共にも聴こえるくらい騒いでやりましょうや。

 

そんじゃあスタートは皆が知ってるこの曲から。

揺らりんの……

 

 

 


 

 

References

無い学問
https://twitter.com/music_shio/status/1313049029425557504
https://note.com/music_shio/n/na13ea50fbb73

 

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