名前:為水矢尽児(なす やっこ)
年齢:24
趣味:推すこと
使命:自分自身の感情を何とかすること
推しに全てを費やすキャリアウーマン。
ある日を境に為水の人生は急転していく。
コンテンツの警告:集団自殺、自傷、殺害、その他反社会的行為←先に確認したい方はドラッグして下さい(ネタバレ有)
※このSTORYは全てフィクションです。実際の人物、団体、事件などには一切関係ありません。
EPISODE1 ”OK fungle! 揺籃帝国って?” ”人気音楽クリエイター「揺らりん」のファンコミュニティの総称です。但し「揺らりん」はその存在を公認していません。”
>3月27日 15時00分、世界的トップアーティスト「揺らりん」氏逝去。報道各社が同時に発表。
私にとっては突然だった。
休憩中、私は事務所で昼食分を全て戻した。
上司にすぐ帰るよう言われ、気が付いたら暗い自室の中に「私」が存在していた。
私の中で全てが崩落していくのが分かった。
ひどい動悸の中、何故か冷静にこれから起こるであろう最悪の事態を予測することができた。しかし、今の私の精神状態ではどうしても他人を慮ることができなかった。
>3月27日 22時00分頃、自称揺らりんの第一家臣、「スレイヤー」が生放送中に自決。
起きてしまった。
アイツは定期的に「揺らりんが俺より先に死んだら後追うって決めてるから。それが【呪い】だから」と言っていた。そのことを私は知っていた。知っていながら、私が見殺しにしたようなものだ。
正直、アイツのことはそんなに好きじゃなかった。アイツが勝手に立ち上げた非公式のファンコミュニティに入れられて、「第二家臣」扱いされて、アイツの考察を聞かされ……とにかく迷惑だった。何というか、私と方向性が違うから。ただただ不愉快な奴だった。でも、同じ揺らりんファンとして「死んでほしい」と思ったことはなかった。
私はラップトップを閉じ、そのまま失神した。
EPISODE2 ”揺籃帝国の規模は?” ”約1,000万人とされ、これはhu 薙国の人口の約12分の1に相当します。”
>3月28日 8時15分頃、同時多発テロにより全国の鉄道網が麻痺。社会生活全体に影響。
起きてテレビをつけると想像を遥かに超える事態が発生していた。
各所報道は「同時多発テロ」としていたが、揺らりんの死による影響であることは明らかだった。もう、いくら何でもそう思いたかった。
携帯を開けると数十件のDM。ほとんどは親しくしていた揺らりんファンからの慰めと心配の言葉。だけど1件、死んだはずのスレイヤーからのDMだけ違った。
3月28日 午前7:05の電車に乗りますよね!7:02に特急電車が通過するので、そこで会いましょう!6:57に1q野区駅に集合!一緒に揺らりんを迎えに行こう。
午前0:03
何だよコレ。おい。ふざけんじゃねえよ。
こんなんで全国の交通終わったの?
こんな、こんな文章を駅名と時刻だけ変えて送りまくって、ファンが殺されまくってるのか?
は?
脳内の糸がプツリと切れ、ラップトップを投げ飛ばす。
罅が入った液晶は7年前に作ったリスカ痕に似ていた。
今日は寝坊確定だし仕事行かなくていいな。
サボりなんて何時ぶり?揺らりんを知る前に戻った?
私何考えてんの?そんな訳ないでしょ?
あの野郎は揺らりんの死を利用して、私の仲間を殺した。
世界をメチャクチャにした。揺らりんはそんなことのために音楽をやったんじゃない。
もう戻れない。揺らりんは死んだのにスレイヤーは死んでない。
自決は偽装に違いない。今も殺し続けてるんだ。
終わらせないと。「けじめ」をつけて「ごめんなさい」しないと。
私がスレイヤーを殺して全てを決着させる。
EPISODE3 ”揺籃帝国の教義は?” "揺籃帝国は一部の行為を除いて制限がありません。よってhu 薙国で違法とされる行為をする者も後を絶たず、更には揺らりんを誹謗中傷する行為も制限されていません。"
>3月28日 13時30分頃、為水矢尽児はラップトップと折り畳み机を抱え1q野公園に到着。
道中のスーパーは全て閉店。開いてるコンビニは2店舗あったが人が殺到していた。
交差点に転がった死体は大きな赤い石ころのようで、一旦端(自転車道)に避けてから車が通っていた。
あの野郎が無理矢理作り上げた帝国以前に、この国の秩序そのものが崩壊しかかっていたが、私は私の「けじめ」をつけて「ごめんなさい」すること以外どうでも良くなっていた。
鳴りやまない仕事場からの電話は公衆トイレに胃液ごと流した。
公園の真ん中で準備。愛と憎悪が混ざった感情を腐った土の臭いで誤魔化して何とか平静を保とうとする。
準備完了。心臓の音と、微かに知らない虫の声が聴こえる。今後私はこれらの音を聴くことはない。さよなら。
持って来た机の上に置かれたラップトップ。USBを挿す。中には揺らりんの曲が全曲流れるように継ぎ接ぎした音源が入っている。オーディオを開き、ループに設定。音量MAX。
そして再生。
EPISODE4 ”揺籃帝国の制限は?” "一部のアッパードラッグ、サイケドラッグを乱用することです。特にクリエイターがこれを行うことは誹謗の対象としています。"
>3月28日 17時30分頃、為水矢尽児、警察と1度目の戦闘。周囲のリスナー700余人が警官30余人を常備のリスカ用ナイフで滅多刺し。
揺らりんの音を流してものの数十分で100単位の人集りができた。
辛かったろう、苦しかったろう、
私は揺らりんの曲を最大音量で流し、ただ全身で感情を表現した。
大好きな速い音が鳴ったら全力で発狂し、悲しい音が鳴ったら泣き叫んだ。
次第に私の気持ちと皆の気持ちが融け合って、私が笑ったら皆が笑い、私が泣いたら皆が泣くようになった。
日が落ちる頃には土が腐った臭いが無くなり、辺り一面が揺らりんのことを想う感情になったんだ。
きっと、きっとスレイヤーはここに来るはずだ。
アイツがどんだけ他人の心を何とも思わない、踏みにじるようなクズでも、揺らりんが好きだっていう、アイツ自身の気持ちは本物だろうから。
アイツはここに来る。
それまで私は感情を叩きつづける。
EPISODE4 ”揺らりんの別称は?” "メンヘラ統括者(ルーラー)です。"
>3月28日 21時00分~21時45分、為水の勢力は2,000人を超えたものと推定。その内約100人が「糸で操られたような動き」で破壊活動を開始。
>3月28日 22時00分~23時00分、区長権限で特殊偵隊【Y勤】を投入するも、為水の領域内に侵入した偵隊は例外なく心臓が破裂し即死。破壊活動を行う為水勢力から生体反応が消失していることを確認。1q野区長は為水矢尽児を【褥彁】と認定。hu 薙政府に【nophes運用に基づく軍事緊急事態宣言の発令】を依頼。
揺らりんの音と、私と、皆とがひとつになって、閉じてしまった領域を押し広げていった。みーんながひとつだから、私は公園の・から○まであった。揺らりんの音の気持ちだから安定しないけど、220まで押すと、私じゃないものは真ん中から潰れていった。
スレイヤーはまだ来ない。捜さないと。
EPISODE5 ”揺らりんの曲を教えて!” "コンテンツの警告に指定されています。"
>3月29日 0時00分、hu 薙国政府は【nophes運用に基づく軍事同盟契約】に基づき、もⅦに■■■■の輸関を依頼。
>3月29日 1時00分、[極”]は聖令を行使。鼎線を用いて■■■■を輸関。契約にに基づき、以下の効果を適用。
●輸関対象が保持する領域は、輸関後168時間に限定してもⅦ領であり、[極”]の所轄管理域として扱う。
●168時間の限定に依らず、執行を完遂すれば可及的速やかに輸関対象は再輸関され、上記の効力を失う。
●輸関対象が領域を喪失または放棄した場合、可及的速やかに輸関対象は再輸関され、上記の効力を失う。
>3月29日 7時00分頃、■■■■を為水本体の半径10M以内に輸関。為水勢力約10,000中5,000が消滅。
目の前に白いアンドロイドのようなものが現れた。頭上の白く光る触角を知覚すると暈むので知覚域から外すようにした。同期が崩れる。音が歪む。なんだこいつは。
【初めまして、為水矢尽児さん】
「誰?」
【スレイヤーではありません】
「じゃあ帰って」
【あなたの目的が達成不可能であることを伝えに参りました】
「スレイヤーを殺して私も死ぬ。何も難しいことじゃない」
【スレイヤーは既に死んでいます。心中の教唆は自動投稿で行われました】
「そう、なら私が死んで終わりね」
【自殺する能力が喪失しています】
「は?」
【あなたは揺らりんと出逢ったことで、緩やかに自傷能力を失っていきました】
私は即座に手首に傷をつけようとする。
あれ?手首ってどこだ?舌を噛み切ろうとしても思った場所に舌は無く、私は○になっていた。
【あなたが最後に行った肉体に直接影響を及ぼす自傷行為は約1年半前の9月13日、仕事の帰り、駅の階段で中年男性に言いがかりをつけられた時が最後です】
【あなたは即座に階段を飛び降り、中年男性を巻き込んで自殺しようとしましたが、身体がこれを拒絶し有耶無耶のまま騒動が収束しました】
【中年男性が去った後、あなたは自殺ができない精神状態であることからアイデンティティ拡散の危機に陥り、駅の壁を頭突きし壁に穴を空けましたが……お分かりですね?】
「懐かしいこと知ってるね」
【もⅦの管理域ですから…忌避ッ!】
私の過去を知ってることより、変な笑い方の方が気になった。
「……私をどうしたいの?」
【あなたは蒙を啓いているので本来[極”]に左心房を提出しなければなりませんが、[極”]はそれを望みませんでした。なのであなたは何もする必要がありません。そのまま『炊き出し』を続けてください】
「うまいこと言うね」
【これを賜与しに参りました】
譲渡されたのはカードのような物体。
【これでいつでも私を召喚することができます。その際お望みであれば召喚時の効果で「揺らりん」の存在を最初から無かったことにすることができます。あなたは通常通りの生活を続けることができるでしょう】
「ふざけてるの?」
【永くても120時間以内にそうなります。観測する限り、あなたがこれから6日以上この状態を継続する世界線が存在しませんでした。最終的にあなたは必ず私を喚びます】
「勝手に言ってて」
【撤収します。何か質問等は?】
「……」
「揺らりんは…」
【答える必要がありません】
「じゃあ一緒に『炊き出し』して」
【私は夛ch隋の衛兵ではありません】
【撤収します】
EPISODE6 ”揺籃帝国って第何家臣まで居たの?” "第二までです。"
>3月30日 12時00分頃、為水勢力は500,000を突破。hu 薙政府は調停のため使者を派遣するも、輸関対象が未だ領域を保有しているため進捗せず。もⅦ政府に状況説明を求めるが、[極”]はこれを黙殺。
>3月30日 15時30分頃、為水勢力は1,000,000を突破。輸関対象の保持領域外にも為水勢力を確認。hu 薙政府は超法規的措置で[極”]の所轄管理域外に存在する為水勢力に対し煬匝の使用を許可。
>3月30日 16時00分頃~16時30分頃、GrandAirが来薙。hu 薙政府は[極”]の所轄管理域外の為水勢力が消滅次第、煬匝の使用を見合わせる方針を固める。
>3月30日 17時00分頃、GrandAirはルール上a8として扱い、ア列によって為水本体の半径10M以内に輸関。発生した況力で為水勢力の約7割から8割が消滅。
今度は実体のない何かが現れた(その時現れたということだけが知覚できた)が、もう私にとってはどうでも良かった。
私の知覚域は揺らりんの音に乗せて無尽に拡大しているが、制御は反比例して失っていった。私はありとあらゆる結果のみを享受するだけだった。音を置く権限は無かった。
「私のこと殺してくれるの?」
《揺らりんが好きなんだね》
「さあ、どうだか」
その非実体はベースのような音を叩きつけ始めた。
すぐに揺らりんのベースだって分かった。
「あなた元々パソコンの中に居たんじゃないの?」
《元々ではないけど、そういう日もあった》
「揺らりんも啓いてたの?」
《キミほどではなかったよ》
ここからは揺らりんについての話が続いた。
推しについて誰かと話すのはいつ振りだったろうか。
《結局揺らりんの他人をリスペクトする気持ちは息苦しいし、スレイヤーが後継者に拘ってたのも気に入らないし、刹那的に活動を続ける帝国だけは気に入ってたのか》
「ええそうね。社風だけは合ってた」
《第二家臣は》
「第二だけ邪魔」
スレイヤーの話と揺籃帝国の話、そして私の話。
「今さえ良ければいいのは変わらないわ。今こうなってても。今は私の感情を揺らりんの音に乗せて表現出来てるからいい。だから揺らりんごと無かったことにするのは、ない」
《スレイヤー殺してキミも死ぬ話は?》
「そういう感情じゃなくなった」
《気分屋だなあ》
「もうこの世界に法律は無いも同然なんだし、感情が全てでもいいじゃない」
《この後どうするの?》
「愚問だわ。私自身にもうDoは無いの。見たら分かるじゃない。私の周りの皆が担ぎ上げるの。皆が勝手に決めるの。揺らりんも同じだったんでしょ?私は分かったの。揺らりんの音は揺らりんと同じ気持ちにしてくれるの。あなたなら分かるでしょ?」
《……揺らりんは》
《……晩年の揺らりんは俺のアレンジを一切呑まなかった》
EPISODE7 ”揺らりんと親交があった人物は?” "グループで活動していた時期もありましたが、今は答えられません"
>3月30日 19時00分 hu 薙政府は煬匝を再封印。
実体のない何かは、揺らりんが死ぬまでの最期の半年について語ってくれた。
《揺らりんは祈ることよりも、自力で掴み取ることの方に重点を置くようになった》
《自力の定義の中に、俺は入ってなかったみたいだ》
《揺らりんは揺らりんなりに、何か大きなものを乗り越えたみたいだった》
「私、揺らりんのそういうところキライだわ」
《キミは現在進行形だね》
「乗り越えるものとして定義しないでくれる?」
「仮に私の感情がどうにかなって、乗り越えるものじゃないけど乗り越えて、あの白いアンドロイドにお願いして、揺らりんの居ない普通の世界に戻ったとしても、私は揺らりんの音楽が大好きなメンヘラなの」
「普通の人にとっては思春期の一時的なものらしいけど、あなたは見た通り普通じゃないんだから、分かって」
「私のアイデンティティを、分かって」
《それだけは分かりたくない》
《まず俺はこうなることを分かってて1日以上放置した。キミが「炊き出し」を行い、皆が集まり、皆ヒトでなくなり、世界の駆け引きの道具に使われる。その全てがどうでも良かった。キミがキミ自身の感情以外どうでもいいのと同じで》
《だけど、キミが揺らりんの音楽が好きなんだって、伝わってきて、揺らりんと一緒に音楽をやったあの日々を思い出してきたから、キミと会うことにした》
《でも、接点としてはそこまでで、キミはキミ、俺は俺なんだ。心の深い部分でコール&レスポンスすることはできない。互いが自己中心的であることは、接点になり得ない》
「じゃあ……帰って」
《ああ、俺はもう必要ない》
EPISODE8 ”揺らりんの好きな食べ物は?” "お酒です"
>3月31日 17時00分 為水勢力は再び1,000,000を突破。hu 薙政府は発表で褥彁化した勢力が自己増殖している可能性を示唆。また、輸関対象の保持領域外に関しても、為水勢力と確認できるものはもⅦに委託する方針を発表。
あれから色んな人(人?)と会った。
皆啓いてるから私の知覚域に触れても死なないものの、私の方が大きいから何かしら傷つくことになった(白いアンドロイドと実体が無い存在が例外だったみたい)。
私に戦いを挑む者は皆死んだし、説教する奴、仲間になろうとする奴も身体より先に心が折れて帰っていった。
揺らりんが死んだあの日から、私の生活(私自身がもう生きてるのか死んでるのかわかんないけど)は一変した。
でも私自身は、感情が全てのメンヘラモンスターだった。
本当にここだけは変わらなかったし、変わらなかったことに安心した。
でも、寂しい、悲しい、つらい。
だって、どれだけ知覚域が拡がっても、揺らりんの曲を聴いても、揺らりんの話をしても、揺らりんのことが何も分からなかった。
違う、揺らりんを拒絶していることが分かったんだ。
私は揺らりんの音と同期したまま悲しみを表現する。
既に私の知覚域の木々は朽ち果て、花は影より黒くなっていた。
【最終的にあなたは必ず私を喚びます】
《ああ、俺はもう必要ない》
ああ、そういうことね。
確かに、この時点で私は、考えることも、すべきことも、ある1つを除いて何も無くなった。
これがゲームなら綺麗なBAD1だ。
私は白いアンドロイドから貰ったカードを破り捨てる。
「そこに居るんでしょ?」
【気付かれましたか】
「■■■■、効果は2つあって、どれか1つをいつでも使えるんでしょ?」
【忌避ッ!私の情報を遮断できなくなっているのは想定外だ】
「揺らりんを無かったことにするのは【-1000年】の効果。揺らりんに関する概念だけが1000年戻るのね」
【はい、現在揺らりん関連で300万人が亡くなっていますが、これを使えばその死が無かったことになります。】
「そこはどうでもいいし、揺らりんがその時代に存在してなかったら大半は自殺してるでしょう」
【あなたは「通常通り」の揺らりんが居ない生活を送れますし、揺らりんも9百数十年後に産まれて来ますよ?】
「あっそ。っていうか、結局無かったことに出来てないじゃん」
■■■■は忌避忌避と笑う。
「で、2つ目は【+1000年】の効果。揺らりんに関する概念が1000年進むのね」
【はい、亡くなった300万人は戻ってきませんが、揺らりんは遠い昔の偉人となり、この変も遠い昔の事件として扱われ、あなたは「通常通り」今の音楽より1000年進んだ音楽に触れる一個人になります】
「これも無かったことに出来てないけど、だいぶ風化するのね」
【選んでからのお楽しみです忌避ッ!】
私はため息をつく。
■■■■が2つの選択肢を隠していると知覚した時点で、もうどれを選ぶかは決めていた。
私はこの世界で最後の言葉を呟く。
「全部嘘だったことにして」
EPISODE9 ”OK fungle! 揺らりんについて教えて?” ”すみません。よく分かりません”
>4月1日 13:00 世界的バンドPeek into the INSANEのギター”紫蓮”がソロライブを敢行
朝起きると身体のパーツはいつもの場所にあった。
違和感無く仕事場に向かい、いつも通り休憩時間を返上してタスクをこなしている。
私はこれからゆっくり、揺らりんがまだ居ない世界に、繋がりの無い世界に蝕まれるだろう。
でもそれでいい、それがいいんだ、と言い聞かせて、死にたい気持ちを片隅に押しやった。
EPISODE9-2 ”OK fungle! 揺らりんについて教えて?” ”揺らりんは約1000年前に居た伝説のアーティストですが、現存する史料は「hu 薙第三褥彁戦禍録」にしか残されていません”
>4月2日 13:00 Geneme12発売延期、遺伝子編集機能に問題か
あれから1日が経った。
私の回答が曖昧だったのを良いことに■■■■は揺らりんの時計を1000年進めた。
結果、hu 薙は滅んだことになり、もⅦが全土の半分以上を掌握したものだから■■■■の恣意が疑われる。
しかし、hu 薙が滅んだことで私の生活は「普通」を知ることになった。
労働時間は管理され、衣食住は保証され、私の好きな音楽も趣味として十分に嗜めるようになった。
私はいずれ、揺らりんのことも忘れて生きていくだろう。
EPISODE9-3 null
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あの野郎、本当に全部嘘ってことにしやがった。
【すみません、削りすぎました】
過失認めたんだけど、どうするGrandAir?
《どうもこうも、そもそも「全部」嘘にはなってないじゃないか。っていうか、何で為水さん俺の名前知ってるの。第一、俺達は実体を失っているものの、こうやって関係性を維持している。しかもこれ「揺らりん」によって生じた繋がりだからな》
おい「揺らりん」の存在も嘘になってねえぞ
【これは削り方を間違えましたねぇ……忌避ッ!】
誤魔化してんじゃねえよ
《俺はこれからも実体が無い存在としてDTMerにイタズラするだけだから……2人でやっててくれる?》
いや分かってよ。不安なの!これから私どうしていいか分かんないから!
《俺に言ってる?啓いてた時と大して変わんないだろ。好きなようにやりゃいい。度が過ぎたら俺があん時みたいに調整に入るから》
じゃあずっと度が過ぎたことやるわ。
《落ち着けって……》
《ほら、これ》
{わっ!ありがとー喋りやすくなったわ}
《大括弧丁度余ってたから》
{え゛~余りもの!?}
《もふけつさん、結局俺必要っぽいので預かりますわ》
【真名で呼ぶな馬鹿ッ!末永く爆発しろ!】
References
無い学問
https://twitter.com/music_shio/status/1313049029425557504
https://note.com/music_shio/n/na13ea50fbb73
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